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船の燃費はどう決まる?L/h・km/L・NM/L・馬力・速度の関係を徹底解説

船の燃費は3つの指標で見る:L/h・NM/L・円/NM

「この船、燃費はどのくらいですか?」

中古艇を見ていると、かなり気になるポイントです。

特に最近は燃料価格の負担も無視できません。今の船から少し大きな艇へ乗り換えたい、船外機艇からディーゼル艇へ変えたい、60馬力から150馬力・300馬力クラスへステップアップしたい。

そんなとき、

「馬力が倍になったら燃料も倍になるのか?」

「ディーゼルなら本当に燃費がいいのか?」

「船は1Lで何km走るのか?」

といった疑問が出てきます。

ところが、船の燃費は車ほど単純ではありません。

L/hだけ見ても分からない。km/Lだけでも分からない。さらに船体、速度、重量、波、プロペラ、トリムまで関係します。

この記事ではAWJが、船の乗り換えや中古艇選びを考える方に向けて、船の燃費の考え方を基礎から整理します。

なお、「1回の出航で燃料代はいくら?」を知りたい方は、別記事の
プレジャーボートの燃費・燃料代はいくら?1回の出航費を実用目線で解説
もあわせてご覧ください。

結論|船の燃費は「L/h」だけでは比較できない

最初に結論です。

船の燃費を比べるときは、最低でも次の3つを分けて考える必要があります。

指標意味何が分かる?
L/h1時間で何L使うかエンジンの時間あたり消費量
km/L1Lで何km進むか距離あたりの燃費
NM/L1Lで何海里進むか船で実用的な距離燃費

例えば、

A艇が20L/h
B艇が40L/h

だったとします。

これだけ見ると、B艇は「燃費が2倍悪い」ように見えます。

しかし、

A艇が15ノット
B艇が30ノット

で走っていたなら、1時間で進む距離も2倍です。

つまり、

時間当たりの燃料消費量と、目的地まで進むための燃料消費量は別物

なのです。

ここを理解すると、船の燃費が一気に分かりやすくなります。

船の燃費を比較する3つの指標:L/h、NM/L、円/NM

まず覚えたい「L/h」とは?

船外機やマリンエンジンでは、燃料消費量を

L/h(リットル・パー・アワー)

で表すことがあります。

これは文字通り、

1時間運転すると何Lの燃料を使うか

という数字です。

ヤマハ発動機も、船外機の燃費を考える際に「最大燃料消費量」をL/hで示しています。これは全開時に1時間あたりどの程度の燃料を消費するかを見る指標で、実際の消費量は天候、操船方法、積載重量などで大きく変わると説明しています。ヤマハ発動機株式会社

例えば巡航中に、

20L/h

なら、

3時間エンジンを使えば

20L × 3時間 = 60L

というイメージです。

ただし、これだけでは「よく進む船なのか」は分かりません。

距離燃費を見るならNM/Lが分かりやすい

船では速度を「ノット」で表すことが多く、

1ノット=1時間に1海里進む速度

です。

1海里は約1.852kmです。

そのため船では、

NM/L(海里/L)

で考えると非常に分かりやすくなります。

計算式はシンプルです。

NM/L = 船速(kt)÷ 燃料消費量(L/h)

例えば、

船速20kt
燃料消費20L/h

なら、

20 ÷ 20 = 1.0NM/L

です。

つまり1Lの燃料で約1海里進むことになります。

L/hだけで比べると判断を間違える例

ここがこの記事で最も重要なところです。

仮に次の2艇があるとします。

A艇B艇
エンジン60馬力300馬力
燃料消費量18L/h55L/h
巡航速度15kt28kt

※数値は考え方を説明するための仮定です。

L/hだけを見ると、

A艇:18L/h
B艇:55L/h

なので、B艇は約3倍燃料を使います。

ところがNM/Lを計算すると、

A艇
15 ÷ 18 = 約0.83NM/L

B艇
28 ÷ 55 = 約0.51NM/L

となります。

B艇の方が燃料は多く使いますが、「3倍燃費が悪い」わけではありません。

さらに乗船人数や搭載量、航行時間、快適性まで加えると、単純な比較はさらに難しくなります。

馬力が大きいほど燃費は悪くなる?

基本的には、同条件なら大きな出力を使うほど燃料消費量も増えます。

ただし、

300馬力だから60馬力の5倍燃料を使う

と単純には考えられません。

理由は、実際の航行では常に最大出力を使っているわけではないからです。

300馬力エンジンでも巡航時に必要な出力はその一部です。

逆に小さなエンジンで重い船を高速巡航しようとすると、高回転・高負荷を長時間使うことになります。

そのため、

エンジンの大きさではなく、「その艇をその速度で走らせるためにどれだけの出力が必要か」

を見ることが重要になります。

船はなぜスピードを出すと燃費が急に悪くなるのか

車でも高速走行で燃費は変わりますが、船ではその傾向がさらに分かりやすく現れます。

船は水の中を押し分けながら進むためです。

速度を上げるほど船体が受ける抵抗は大きくなり、その抵抗に打ち勝つために必要な出力も増えていきます。

特にプレーニング艇では、

低速
↓
船首が持ち上がる
↓
プレーニングへ移行
↓
船体が水面上を滑走する

という状態変化があります。

Hondaも、ボートでは加速時に十分なトルクがないと船首が上がった状態が続き、水の抵抗が少ないプレーニング状態へ移行しにくくなると説明しています。Honda Global

つまり燃費を見るときには、

「何rpmか」だけでなく「その回転数で船がどんな姿勢になっているか」

も大切です。

「一番遅く走れば一番燃費がいい」わけでもない

ここも誤解されやすいポイントです。

極端に低速ならL/hは小さくなります。

しかし船速も非常に遅いため、

目的地まで何時間もかかる

ことになります。

例えば、

5ktで5L/h
なら

5 ÷ 5 = 1.0NM/L

ですが、

20ktで16L/h
なら

20 ÷ 16 = 1.25NM/L

です。

この仮定では、後者の方が1時間の燃料使用量は多いのに、1海里あたりでは高効率です。

つまり、

一番L/hが低い速度=一番距離燃費が良い速度

ではありません。

船には「燃費の良い巡航域」がある

実艇では、多くの場合、

低速
↓
プレーニング移行
↓
巡航域
↓
高速域・全開域

という中で燃費特性が変わります。

理想的なのは、

十分にプレーニングしているが、必要以上に高速ではない領域

を探すことです。

ヤンマーのエコモニターでは、燃料消費量をリアルタイム表示し、最高回転数に対して40〜70%の回転域をエコ運転表示とする仕組みも採用されています。もちろん最適域は艇ごとに異なりますが、「常に全開より、中間回転域をうまく使う」という考え方は参考になります。YANMAR

回転数を少し下げるだけでも燃料消費は変わる

ここは実際の操船で非常に重要です。

例えば最高回転数5500rpmの船外機を、

5500rpm
5000rpm
4500rpm
4000rpm

と落としていくと、燃料消費量は単純比例ではなく下がっていきます。

一方、船速は燃料消費ほど急激には下がらないケースがあります。

その結果、

少し速度を落とした方がNM/Lが改善する

ことがあります。

これが「巡航速度」を意識する理由です。

図解|燃費を見るときのイメージ

速度域ごとの特徴を整理すると、次のようになります。

回転数と燃料消費量の概念図:低速、プレーニング移行、巡航、高速・全開の4領域

※図の回転数・燃料消費量は傾向を説明するためのイメージです。特定艇の実測値や推奨回転数を示すものではありません。

低速域

燃料消費:少
船速:遅い
→ L/hは良く見えるが移動効率は必ずしも高くない

プレーニング移行域

燃料消費:増加
船体抵抗:大きい
→ 条件によって燃費が悪化しやすい

巡航域

燃料消費:中
船速:十分
→ 距離燃費が良くなりやすいポイント

高速・全開域

燃料消費:急増
船速:増える
→ 速度上昇以上に燃料を消費しやすい

※実際の曲線は艇・エンジン・プロペラ・海況で異なります。

ガソリン船外機とディーゼルでは何が違う?

ガソリン船外機とディーゼルの燃料、重量、用途、維持費の比較

乗り換えでよく比較されるのが、

ガソリン船外機艇

と

ディーゼル艇

です。

比較項目ガソリン船外機ディーゼル
燃料ガソリン軽油
エンジン重量比較的軽い重い傾向
構造船外に搭載船内・船内外機が中心
熱効率ディーゼルより不利な傾向高い傾向
部分負荷燃費機種による良好な傾向
メンテナンス脱着性・アクセス性に利点機関室内で整備
向く用途小〜中型艇など幅広い長距離・長時間運転にも向く

ディーゼルは高圧縮比を使えることなどから熱効率が高く、ヤンマーも燃料消費率の低さを特徴として説明しています。YANMAR

ただし、

「ディーゼル=必ず燃料代が安い」

と結論づけるのは危険です。

船体重量、馬力、巡航速度、燃料単価、年間航行時間、整備費まで変わるためです。

2026年時点では「ディーゼル=免税軽油」でもない

古いWeb記事を読むと、

「船は免税軽油だからディーゼルが圧倒的に安い」

という説明を見かけることがあります。

ここは現在の制度では注意が必要です。

2025年4月1日以降、釣りやクルージングなどレクリエーション目的で使う、いわゆるプレジャーボートは免税軽油の対象外になっています。兵庫県や愛媛県などの自治体もこの変更を案内しています。兵庫県

一方で、業として行う用途などは制度上の扱いが異なる場合があります。

したがって2026年現在、

昔の「免税軽油前提」の燃料費比較をそのまま使わない

ことが重要です。

最近の船外機は燃費技術も進化している

「ガソリン船外機は燃費が悪い」と一括りにするのも現代では正確ではありません。

例えばHondaは、理論空燃比より薄い混合気で燃焼させるリーンバーン制御「ECOmo」や、高精度燃料噴射制御を採用しています。本田技研工業株式会社

つまり、

古い2スト船外機
と
現代の電子制御4スト船外機

では燃費特性が大きく異なります。

中古艇ではエンジンの「馬力」だけでなく、

型式・世代・2スト/4スト・電子制御の有無

まで確認したいところです。

船体重量は燃費にかなり影響する

同じ150馬力船外機を積んでも、

軽量なオープン艇

と

キャビン、発電機、大型バッテリー、清水タンク、艤装を積んだ艇

では燃費は同じになりません。

重量が増えれば、加速やプレーニング維持に必要な出力も増えます。

さらに、

燃料満タン
4人乗船
クーラーボックス
釣具
氷
予備燃料

などでも重量は変わります。

だからメーカー試験値と実釣行の燃費が異なるのは自然なことです。

船底の汚れも燃費を悪化させる

係留艇では特に重要です。

船底に、

藻
フジツボ
貝類

などが付着すると、水の抵抗が増えます。

すると同じ船速を維持するために、より多くの出力が必要になります。

「以前より同じrpmなのに速度が出ない」

という場合、エンジンだけでなく船底状態も確認する必要があります。

プロペラでも燃費は変わる

船外機艇ではプロペラも重要です。

プロペラには、

直径
ピッチ
ブレード数
材質

などさまざまな要素があります。

艇に合っていないプロペラでは、

エンジンが適正回転まで上がらない
逆に回りすぎる
加速が悪い
巡航効率が悪い

といったことがあります。

中古艇購入時には、

「何馬力が付いているか」だけでなく「現在のプロペラで適正回転域に入っているか」

まで確認できると理想的です。

トリム調整も燃費に影響する

プレーニング艇では、船外機やアウトドライブのトリムによって船体姿勢を調整できます。

トリムが適切でないと、

船首を押さえすぎる
船尾が沈みすぎる
接水面積が増える

などによって抵抗が大きくなる可能性があります。

適切な船体姿勢を作ることで、同じ速度でも必要出力を抑えられる場合があります。

「この船の燃費は?」と聞くときに確認したい数字

中古艇購入時に売主や販売店へ、

「燃費どれくらいですか?」

だけ聞いても、意外と比較できません。

確認したいのは次の組み合わせです。

  • 巡航回転数
  • 巡航速度
  • そのときのL/h
  • 全開回転数
  • 最高速
  • エンジン型式・馬力
  • 船体サイズ・重量
  • 通常の乗船人数
  • 燃料搭載量
  • 船底・プロペラの状態

特に、

「○rpmで○kt、そのとき○L/h」

まで分かれば、かなり実用的な比較ができます。

乗り換え時は「1海里あたりの燃料代」で比べる

例えば燃料単価を仮に180円/Lとして、

A艇
0.8NM/L

B艇
0.5NM/L

なら、

A艇
180 ÷ 0.8 = 225円/NM

B艇
180 ÷ 0.5 = 360円/NM

です。

この数字を出すと、

「目的地まで20海里なら燃料代はいくら違うか」

まで計算できます。

往復40NMなら、

A艇
225円 × 40 = 9,000円

B艇
360円 × 40 = 14,400円

です。

年間30回同じ航程なら、差はさらに大きくなります。

乗り換えでは「燃費」より「年間燃料費」を見る

実際の購入判断では、

NM/Lが0.1違う

こと自体より、

自分の年間航行距離だといくら差になるのか

の方が重要です。

例えば、

近場中心で年間20回しか乗らない人

と

沖へ毎週出る人

では、燃費差の意味がまったく違います。

さらに購入価格や保管費、整備費まで含めると、

「燃費の良い船を高く買う」

より

「燃費は少し劣るが購入価格が安い」

方が総所有コストでは有利な場合もあります。

AWJが考える中古艇の燃費比較

中古船選びでは、

燃費だけで船を決めない

ことが大切です。

船の燃費は、

エンジン
船体
速度
積載
航行距離
使い方

の組み合わせで決まります。

ですから、

「ディーゼルだから正解」

「小さい船外機だから燃費がいい」

「馬力が大きいから燃費が悪い」

と単純化しない方がいいでしょう。

むしろ、

自分がよく行くポイントまで、何ノットで走り、何L使うか

までイメージする。

これが、中古艇の乗り換えで失敗しにくい燃費比較だとAWJでは考えています。

自分の船で「燃費曲線」を作ってみよう

すでに船を持っている方には、ぜひおすすめしたい方法があります。

次のように回転数ごとの数字を記録します。

同じ船の回転数・船速・燃料消費量・NM/Lを比較した仮定例
rpm船速燃料消費NM/L
2,0006kt5L/h1.20
3,00010kt10L/h1.00
4,00020kt16L/h1.25
4,50024kt22L/h1.09
5,50030kt40L/h0.75

※数値は説明用の仮定です。

こうしてみると、

「4,000rpm付近が一番距離燃費が良い」

といったことが見えてきます。

ヤンマーも燃料消費量をリアルタイム表示・記録するエコモニターを用意しており、実艇データを見ながら操船する考え方はすでに実用化されています。YANMAR

燃料高の時代だからこそ「自分の燃費」を知る

船の燃費は、

「この船なら何km/L」

と一言で答えられるものではありません。

同じ艇でも、

海況
積載
回転数
トリム
船底状態

によって変わります。

だからこそ大切なのは、

自分の船、自分の航行パターンで燃費を把握すること

です。

中古艇への乗り換えを考えるときも、

L/h
船速
NM/L
燃料単価
年間航行距離

まで整理すれば、

「この船に乗り換えると、年間の燃料負担がどのくらい変わるのか」

をかなり具体的に判断できるようになります。

まとめ|船の燃費は「時間」ではなく「目的地まで」で考える

船の燃費を理解するポイントは、

L/hだけを見ないこと

です。

1時間に使う燃料が多い船でも、その分速く遠くへ進む場合があります。

逆に小さなエンジンでも、重い船を高負荷で走らせ続ければ効率が良いとは限りません。

だから船を比較するときは、

L/h → 船速 → NM/L → 円/NM → 年間燃料費

の順で考えてみてください。

すると「燃費が良い・悪い」という曖昧な話が、実際のボートライフに必要な数字へ変わります。

そして燃費を理解すると、船選びも変わります。

どれだけ大きな船が欲しいかではなく、自分がどんな距離を、どんな速度で、年間何回走るのか。

そこから逆算することが、燃料高の時代に合った中古艇選びの一つの考え方ではないでしょうか。

具体的な出航費の試算は、プレジャーボートの燃料代・1回の出航費をご覧ください。

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